2025年度の日本の人事コンサルティング市場は、企業を取り巻く環境の急速な変化を背景に、引き続き活況を呈しています。特に、人的資本経営への注目度の高まり、デジタルトランスフォーメーション（DX）の加速、ジョブ型雇用への移行、サステナビリティへの取り組み強化といったメガトレンドが、企業の組織・人事戦略に大きな影響を与えており、これに伴い人事コンサルティングへの需要も増加傾向にあります。こうした状況は、2025年度の採用動向にも色濃く反映されています。以下では、主要なファーム分類ごとに、日本における採用動向を解説します。

以下、主な分野別に採用動向を記載します。

組織人事（外資系）ブティック系ファーム

外資系組織人事コンサルティングファームは、グローバルな知見やネットワーク、先進的な methodologies を強みとしています。2025年度も、M&Aに伴う組織統合や人事デューデリジェンス、グローバル共通の人事プラットフォーム導入、タレントマネジメント戦略の高度化、役員報酬制度設計といった領域で高い需要が見込まれます。採用においては、大規模で複雑なプロジェクトを推進できる経験豊富なコンサルタントに加え、報酬・福利厚生、組織設計、チェンジマネジメントといった特定の専門分野に深い知見を持つ人材へのニーズが高い傾向にあります。また、HRテクノロジーに関する知見やデータ分析スキル、そしてグローバル案件に対応できる高度な英語力も引き続き重視されるでしょう。新卒採用も一定数行われていますが、中途採用市場では即戦力となる経験者が中心となっています。

Big4系コンサルティングファーム／総合系コンサルティングファーム

Big4系およびアクセンチュア、アビーム等の総合系コンサルティングファームは、日本で積極的な採用を継続しています。企業のDX推進や大規模なシステム導入、人的資本経営への対応といった変革ニーズを背景に、コンサルタント需要は極めて旺盛です。具体的には、IT戦略・導入支援、データ活用、組織・人事変革、ジョブ型雇用等の制度改革、M&A関連支援、サステナビリティ戦略などが主要テーマとなっています。コンサルティング経験者はもちろん、事業会社での企画・実務経験者、ITエンジニア、データサイエンティストなど、多様な専門性を持つ人材を広く求めており、異業種からの転職も活発です。

シンクタンク系コンサルティングファーム

シンクタンク系の人事コンサルティング部門は、官公庁向けの調査研究や政策提言に加え、大企業向けの中長期的な視点に立ったリサーチや戦略策定支援を特徴としています。2025年度は、人的資本情報の開示義務化の流れを受け、人的資本に関する調査・分析やKPI設定支援、サステナビリティ経営と連動した人事戦略の策定、多様な働き方に関する調査研究などのニーズが高まると予想されます。採用では、マクロな視点での分析力、高度なリサーチ能力、政策動向への深い理解を持つ人材が求められる一方、近年では企業の人事課題解決に直接貢献できる戦略的な人事コンサルティング経験者や、特定産業への知見を持つ人材の採用も強化する傾向が見られます。野村総合研究所（NRI）などが、人事領域の経験者採用を積極的に行っている例も見られます。

人材育成・組織開発系コンサルティングファーム

人材育成・組織開発系コンサルティングファームは、企業の持続的な成長に不可欠な「人」と「組織」の活性化を支援します。2025年度は、経営環境の変化に対応するためのリーダーシップ開発、次世代経営人材の育成、組織文化の変革、従業員エンゲージメントの向上、ダイバーシティ、エクイティ＆インクルージョン（DE&I）の推進といったテーマへの関心が引き続き高く、関連するコンサルティング需要も堅調です。採用においては、組織診断、研修プログラムの企画・設計・ファシリテーション、コーチングスキルを持つコンサルタントや、特定のテーマ（例：心理的安全性、アジャイル組織開発）や業界に特化した専門性を持つ人材への需要が高い状況です。オンラインと対面を組み合わせた効果的なプログラムを提供できる能力も、ますます重要になっています。



年別採用動向