2024年度の日本の人事コンサルティング市場は、企業のデジタルトランスフォーメーション（DX）推進や事業変革への継続的な意欲、そして「人的資本経営」への注目の本格化を背景に、さらなる成長が見込まれます。コンサルティング業界全体での需要拡大が見込まれる中、特に組織人事領域は高い成長ポテンシャルを秘めていると考えられ、これに伴い人事コンサルタントの採用市場も活況を維持すると予測されます。しかしその一方で、専門性を持つ即戦力人材の獲得競争は既に激化しており、2024年度は採用難易度がさらに上昇する懸念があります。

以下、主な分野別に採用動向を記載します。

組織人事（外資系）ブティック系ファーム

組織人事領域に特化した外資系ブティックファームでは、2024年度もその高度な専門性が引き続き求められるでしょう。特に、役員報酬制度設計の高度化、グローバル化に伴う人事戦略の見直し、増加が見込まれるM&Aにおける人事デューデリジェンスやPMI支援、複雑化する年金・退職金制度への対応といった領域での需要は堅調に推移すると考えられます。採用においては、これらの専門分野で深い知見と実績を持つ経験豊富なコンサルタントに対する採用意欲は、引き続き高い水準を維持する見込みです。ニッチな領域でクライアントの課題解決に貢献できる、真のプロフェッショナルへのニーズは一層強まるでしょう。

Big4系コンサルティングファーム／総合系コンサルティングファーム

Big4系ファームや総合系コンサルティングファームは、2024年度もコンサルティング市場全体の成長を牽引し、大規模な採用活動を継続すると考えられます。企業の変革ニーズは依然として高く、特に経験者を中心とした中途採用が活発化する可能性があります。人事コンサルティング領域においては、DX推進と連携した人事・組織改革プロジェクト、本格化する人的資本経営の具体化支援（戦略策定、KPI設定、情報開示支援など）、多くの企業で検討が進むジョブ型雇用への移行支援、そしてWorkdayやSAP SuccessFactorsといったHRテクノロジーの導入・活用支援などのテーマに対する需要は引き続き旺盛であると予測されます。これに伴い、関連プロジェクトの経験者や専門スキルを持つコンサルタント、事業会社で人事企画や制度設計等の実務経験を持つ人材などに対する積極的な採用が見込まれます。

シンクタンク系コンサルティングファーム

シンクタンク系ファームにおいても、2024年度は人事コンサルティング領域での活動がより一層活発化すると予想されます。特に、2023年から始まった人的資本情報の開示義務化の流れは2024年度も継続し、関連する調査研究、情報開示基準への対応支援、そして開示情報を活用した企業価値向上戦略の策定などのニーズが高まるでしょう。官公庁向けの政策提言やリサーチといった従来の強みに加え、民間企業に対する中長期的な視点での人事戦略コンサルティングへの注力も進むと考えられ、高い分析能力、リサーチスキル、そして戦略的思考力を持つ人材への需要が高まると見込まれます。

人材育成・組織開発系コンサルティングファーム

人材育成・組織開発系のコンサルティングファームは、人的資本経営の重要性が増す中で、2024年度も高い需要が見込まれる領域です。変化する働き方への対応、従業員エンゲージメントや「働きがい」の向上策、サステナビリティ経営と連動したDE&I（ダイバーシティ、エクイティ＆インクルージョン）の推進、将来を見据えた次世代リーダー育成、組織風土改革といったテーマは、企業にとってますます重要になるでしょう。採用においては、効果的な研修プログラムを企画・設計・実施できる人材、組織診断やデータ分析に基づいた課題解決を提案できるコンサルタント、ファシリテーションやコーチングスキルを持つ専門人材などへのニーズは、引き続き活発であると予測されます。



年別採用動向